遺品整理で捨ててはいけないものとは?相続手続きに必要な書類の保管の考え方

遺品整理を始めると、多くの人が「何を残し、何を処分してよいか」という判断に直面する。写真や手紙のように思い出として残すかどうかを迷うものもあれば、見た目には価値がなさそうでも、実は各種の公的手続きに欠かせない書類や物品が含まれていることもある。特に遺言書、年金関係の書類、相続財産の把握につながる通帳や証書などは、手続きが一段落するまで安易に処分しないことが重要になる。

遺言書は開封せず家庭裁判所の検認へ

自宅の引き出しや仏壇の周辺などから遺言書らしきものが出てきた場合、封がされていれば絶対にその場で開けてはいけない。裁判所の案内によると、封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人等の立会いのもとで開封することが定められており、遺言書の保管者や発見した相続人が家庭裁判所に「検認」を申し立てる必要がある。検認は遺言の内容や形状、日付、署名などをその時点で明確にし、偽造・変造を防ぐための手続きであって、遺言そのものの有効・無効を判断するものではない。ただし、検認済証明書が付いていなければ遺言の執行に進むことができないため、発見した遺言書を勝手に処分したり中身を書き換えたりすることのないよう注意したい(裁判所「遺言書の検認」)。なお、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた遺言書については検認が不要になる場合があるため、保管の有無もあわせて確認しておきたい。

年金証書と年金受給権者死亡届

故人が年金を受け取っていた場合は、日本年金機構への届出が必要になる。年金証書や死亡の事実を確認できる書類(住民票の除票、戸籍抄本、死亡診断書の写しなど)を添えて、すみやかに年金事務所や街角の年金相談センターへ提出する仕組みで、マイナンバーが年金の記録に登録されていれば死亡届の提出そのものが原則不要になる場合もある。注意したいのは、届出が遅れると年金を多く受け取りすぎる状態になり、後から返還を求められる可能性があることだ(日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」)。年金証書は遺品整理の過程で紛失しやすいものの一つなので、通帳や保険証などと一緒にまとめて保管しておくと手続きがスムーズになる。

相続財産の把握につながる通帳・証書類

相続税の申告が必要になるかどうかを判断するためにも、預貯金通帳、証券会社からの取引報告書、不動産の権利証(登記識別情報)、保険証券、借用書といった、故人の資産や負債を示す書類はひとまず手元に残しておくべきものにあたる。国税庁の案内では、相続税の申告と納税の期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内とされている(国税庁「相続税の申告手続」)。申告が必要かどうかを判断する段階でも財産の全体像を把握する必要があるため、遺品整理の早い時期に金融機関からの郵便物や通帳、証書類をまとめてすべて処分してしまうと、後になって財産の内容を確認できず、手続きに支障が出ることがある。

「とりあえず処分」を避けたほうがよい理由

相続放棄や限定承認を検討している場合には、遺品の扱いにさらに注意が必要になる。相続財産を処分する行為は、単純承認をしたものとみなされ、その後の相続放棄ができなくなることがあるためだ。この考え方については、「遺品を勝手に処分すると相続放棄ができなくなる?『法定単純承認』をわかりやすく解説」で詳しく取り上げている。相続放棄を考えていない場合でも、遺言書や年金関係の書類、財産の内容がわかる書類は、各種手続きが一区切りつくまでは処分せずにひとまとめにして保管しておくのが安全な進め方だといえる。

迷ったときは処分せず専門家に確認する

遺品整理を進める中で、価値がわからない書類や、思いがけず高価なものが見つかることもある。判断に迷うものについては、その場で独断で処分したり誰かが持ち帰ったりせず、家庭裁判所や税務署、法務局、弁護士や税理士といった各手続きの窓口に確認してから扱いを決めるのが望ましい。何を残すべきかを一つひとつ厳密に線引きするのは難しいが、「わからないものは、まず保留にする」という姿勢を持っておくだけでも、後々のトラブルを避けやすくなる。

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