遺品整理で相続税がかかりそうだと分かったら?速算表を使った税額の計算方法と、配偶者の税額軽減・2割加算までわかりやすく解説

相続税の申告が必要だと分かった後、次に気になるのは「結局いくら払うことになるのか」という金額そのものだ。所得税のように自分の取得額に税率を掛ければ済むと思っていると、相続税の計算はそう単純にはいかない。まず遺産全体を法定相続分で分けたと仮定して仮の総額を出し、それを実際の取得割合で配り直すという、独特の2段階の手順を踏むからだ。同じ遺産総額でも、誰がどう相続するかによって、一人ひとりが実際に納める金額は変わってくる。

1. 相続税は「取得した金額にそのまま税率をかける」ものではない

相続税がいくらになるかを知りたいとき、多くの人が最初につまずくのがここだ。所得税や住民税のように、自分が受け取った金額に一定の税率を掛ければ答えが出る仕組みではない。相続税は、亡くなった人の遺産全体を対象にまず「相続税の総額」を計算し、それを実際に財産を取得した割合に応じて相続人ごとに配り直すという、二段構えの手順を踏む。相続税がかかるかどうかの判定や、基礎控除の考え方、申告期限については以前遺品整理で通帳や証券会社からの書類が何通も出てきたら?相続税の申告が必要かどうかの判断基準と、10か月の申告期限を解説で扱った。ここでは、その先にある「実際に払う金額」がどう決まるのかを、国税庁が示す計算の手順に沿って一つずつ確認する。

2. ステップ1:課税価格の合計額から基礎控除を差し引く

計算の出発点は、現金・預貯金・不動産・株式など相続財産の総額から、非課税財産や債務・葬式費用を差し引いた「課税価格の合計額」を出すことだ。ここからさらに「基礎控除額」を差し引いた残りが、実際に課税対象となる「課税遺産総額」になる。基礎控除額は3,000万円に600万円×法定相続人の数を足した金額で決まり、この金額を超えなければ相続税はかからず、申告も原則不要になる。法定相続人の数え方(相続放棄をした人も人数に含める、養子には人数の制限があるなど)は前述の記事で詳しく扱っているため、ここでは基礎控除を引いた後の話に絞って進める。

3. ステップ2:法定相続分で按分し、「相続税の総額」を出す

3-1. 相続税の速算表

課税遺産総額が決まったら、実際の遺産分割の内容にかかわらず、いったん法定相続分どおりに各相続人が取得したと仮定して計算を進める。国税庁が示す「相続税の税率」によれば、各法定相続人の取得金額に応じた税率と控除額は次のとおり定められている。1,000万円以下は税率10%で控除額はなく、1,000万円超3,000万円以下は税率15%・控除額50万円、3,000万円超5,000万円以下は税率20%・控除額200万円、5,000万円超1億円以下は税率30%・控除額700万円、1億円超2億円以下は税率40%・控除額1,700万円、2億円超3億円以下は税率45%・控除額2,700万円、3億円超6億円以下は税率50%・控除額4,200万円、6億円超は税率55%・控除額7,200万円となる。金額が上がるほど税率が段階的に重くなる超過累進課税の仕組みで、取得金額に税率を掛けてから控除額を差し引くことで、本来なら区分ごとに分けて計算すべき累進課税を一回の掛け算と引き算で済ませられるようにしたのがこの速算表だ。

3-2. 法定相続分どおりの仮の取得額に、速算表を当てはめる

各相続人が法定相続分で取得したと仮定した金額を、それぞれ速算表に当てはめて税額を出し、全員分を合計したものが「相続税の総額」になる。国税庁の同じページも、この手順を「課税遺産総額を民法に定める法定相続分に従って取得したものと仮定して」各相続人の取得金額を割り出し、速算表を適用して「合計したものが相続税の総額になる」と説明している。この段階では、実際に誰がどれだけ財産を取得するかという遺産分割の結果はまだ反映されない。

4. ステップ3:相続税の総額を、実際の取得割合で配り直す

「相続税の総額」が決まったら、最後に、実際の遺産分割協議や遺言の内容に基づいて、各相続人が現実に取得した財産の割合に応じてこの総額を配分し直す。たとえば配偶者が遺産の半分を、子ども2人がそれぞれ4分の1ずつを実際に取得したなら、相続税の総額のうち半分を配偶者が、4分の1ずつを子ども2人が負担する形になる。ステップ2で使った「法定相続分」と、ここで使う「実際の取得割合」は別の数字であり、法定相続分どおりに遺産を分けなかったとしても、相続税の総額そのものは変わらない。変わるのは、その総額を誰がどれだけ負担するかという配分だけだ。

5. 税額から加算・控除されるもの

5-1. 配偶者・一親等の血族以外は、原則2割加算される

各相続人の税額が決まった後、被相続人との関係によって税額が調整される場合がある。国税庁の「相続税額の2割加算」によれば、配偶者と一親等の血族(父母・子、養子を含む)以外の人が相続や遺贈で財産を取得した場合、その人の相続税額に2割が加算される。兄弟姉妹や甥・姪が相続人になるケースが典型だが、孫についてはやや込み入る。実の子に代わって孫が代襲相続人になった場合、その孫は一親等の血族に準じる扱いを受けるため2割加算の対象にはならない。一方、代襲相続とは関係なく被相続人が孫を養子にした、いわゆる「孫養子」は、相続の機会を一世代飛ばすことになるため原則として2割加算の対象になる。ただし、その孫養子がたまたま代襲相続人でもある場合は、代襲相続人としての扱いが優先され、2割加算の対象から外れる。生命保険金の受取人が相続人以外だった場合の2割加算の考え方は遺品整理で保険証券が出てきたら?受取人がすでに死亡していた場合の生命保険金の行方と、相続税の非課税枠が使えないケースでも扱っている。

5-2. 配偶者の税額軽減 — 1億6,000万円か法定相続分相当額のどちらか多い方まで

配偶者が実際に取得した財産については、1億6,000万円と配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までであれば、配偶者の相続税額そのものがゼロになる税額軽減の制度がある。遺産総額が数億円規模でも、配偶者の取得分が法定相続分の範囲内であれば配偶者に相続税はかからない計算になる。ただしこの軽減を受けるには、相続税がゼロになる場合でも申告書の提出が必須になる点と、原則として申告期限内に配偶者の取得財産が確定している必要がある点に注意がいる。申告期限に間に合わない場合の「申告期限後3年以内の分割見込書」の使い方や、10か月の申告期限そのものについては相続税の申告要否と期限の記事で扱った通りだ。

5-3. 未成年者控除・障害者控除

相続人の中に未成年者や障害者がいる場合は、さらに個別の税額控除が用意されている。国税庁の「未成年者の税額控除」によれば、控除額は10万円に、その相続人が18歳になるまでの年数(1年未満の期間は切り上げて1年として計算する)を掛けた金額になる。「障害者の税額控除」も考え方は同様で、一般障害者は10万円、特別障害者は20万円に、その相続人が85歳になるまでの年数(1年未満は切り上げ)を掛けた金額が控除される。これらの控除額がその相続人本人の相続税額から引ききれない場合、残りの金額を、その相続人を扶養している他の相続人の税額から差し引ける仕組みも用意されている。

6. 具体例で計算してみる

実際に数字を当てはめて流れを追うと分かりやすい。課税価格の合計額が2億円、相続人が配偶者と子ども2人の合計3人だったとする。基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円なので、課税遺産総額は2億円-4,800万円=1億5,200万円になる。法定相続分は配偶者が2分の1で7,600万円、子ども1人あたりが4分の1で3,800万円ずつだ。速算表に当てはめると、配偶者の7,600万円は5,000万円超1億円以下の区分にあたり、7,600万円×30%-700万円=1,580万円。子ども1人分の3,800万円は3,000万円超5,000万円以下の区分にあたり、3,800万円×20%-200万円=560万円で、子ども2人分では1,120万円になる。これらを合計した2,700万円が「相続税の総額」だ。

ここで実際の遺産分割の内容として、配偶者が財産の50%、子ども2人がそれぞれ25%ずつを取得したとすると、相続税の総額2,700万円のうち、配偶者の負担分は50%にあたる1,350万円、子ども1人あたりの負担分は25%にあたる675万円になる。配偶者が実際に取得した財産は2億円の50%で1億円であり、1億6,000万円を下回るため、配偶者の税額軽減により配偶者の納税額1,350万円は全額ゼロになる。子ども2人は実子であるため2割加算の対象にはならず、未成年者控除・障害者控除の対象者もいなければ、それぞれ675万円、合計1,350万円が実際の納税額になる。配偶者は納税額がゼロでも申告書の提出自体は必要になる点は、5-2で触れた通りだ。

7. 自分で計算できるのか、専門家の判断が必要になる場面

現金や預貯金が中心の遺産であれば、ここまでの手順を電卓で追うだけで、大まかな税額の見当をつけることはできる。国税庁も「相続税の申告要否判定コーナー」という自己診断ツールを公開しており、要否や概算額を確認する入口として使える。難しくなるのは、土地や非上場株式のように、金額そのものが「いくらか」を確定させる作業自体に専門的な評価が必要な財産が含まれる場合だ。上場株式の相続税評価の考え方は故人の証券口座はどう相続する?株式・投資信託の名義変更手続きと、NISA口座が非課税のまま引き継げない理由で、実家が空き家になった場合の特例との関係は空き家になった実家を売るなら「3,000万円特別控除」は使えるか?遺品整理と解体のタイミング、適用要件を解説で扱っている。土地の評価には路線価や倍率方式、各種の減額特例が絡み、この記事で触れた速算表の当てはめ以前の「課税価格の合計額」を確定させる部分だけでも、判断が分かれることが珍しくない。死亡退職金や生命保険金のように、相続財産に加えるかどうかの入り口から非課税枠が絡む財産については遺品整理で退職金の通知書が出てきたら?死亡退職金は相続財産に入らない仕組みと、相続税の非課税枠も参考になる。

相続税の計算は、税率を調べて掛け算をする作業そのものより、その手前にある「財産をいくらと評価するか」「誰がどれだけ取得したことにするか」という部分に難しさが集中している。速算表と加算・控除の仕組みを知っておけば、税務署や税理士から示された数字が何を根拠にしているのかを、自分の手で検算できるようになる。

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

コメント Comments

コメント一覧

コメントはありません。

コメントを残す

トラックバックURL

https://anshin-life.biz/archives/6509/trackback

関連記事 Relation Entry