相続税の申告後に遺品整理で新しい財産が見つかったら?修正申告と追徴課税・重加算税の仕組み

相続税の申告書を税務署に提出し、ひと区切りついたつもりで遺品整理を続けていたら、仏壇の奥から古い郵便貯金の証書や、まとまった額の入った缶が出てきた――このような経験をした人は少なくない。すでに申告を終えている以上、今さら手続きをやり直す必要はないと考えたくなるが、相続税は遺産の全体に対してかかる税金であり、あとから見つかった財産を放置すれば、税務署から指摘を受けたときに追徴課税を課されることになる。

財産が見つかったら、まず記録して立ち止まる

遺品整理の途中で新たな財産が見つかったとき、最初にすべきことはその場での判断ではない。見つかった経緯と場所を写真に残し、内容と推定される価額をメモにして、他の相続人と共有する。相続税の申告を税理士に依頼していた場合は、その税理士にも連絡しておくと、次の手続きがスムーズになる。ここで慌てて自分の判断だけで処分したり、黙って持ち帰ったりすると、相続人同士の疑心暗鬼だけでなく、単純承認とみなされて相続放棄ができなくなるリスクも生じる。遺品を独断で処分してはいけない理由は「遺品を勝手に処分すると相続放棄ができなくなる?『法定単純承認』をわかりやすく解説」で扱った通りである。

次に確認すべきは、自分がすでに相続税を申告していたかどうかである。すでに申告書を提出していた人が新たな財産を追加する場合と、そもそも申告義務があることに気づかず申告していなかった人が初めて財産を把握する場合とでは、これから取るべき手続きの名前も、課される税金の種類も異なってくる。

「修正申告」と「期限後申告」は何が違うのか

すでに相続税の申告書を提出していた人が、申告漏れの財産を追加して税額を訂正する手続きを「修正申告」と呼ぶ。一方、遺産の総額が基礎控除額を超えていたにもかかわらず、そもそも申告そのものをしていなかった場合に、期限を過ぎてから初めて行う申告を「期限後申告」と呼ぶ。どちらも書類の形式自体は通常の相続税申告書と同じだが、あとで説明する加算税の種類が異なり、修正申告には過少申告加算税、期限後申告には無申告加算税が対応する。相続税の申告が必要かどうかを分ける基礎控除額の考え方や10か月の申告期限については「遺品整理で通帳や証券会社からの書類が何通も出てきたら?相続税の申告が必要かどうかの判断基準と、10か月の申告期限を解説」で詳しく取り上げている。見つかった財産の価額を遺産総額に足したときに、基礎控除額を初めて超えるようであれば、修正申告ではなく期限後申告が必要になる。

「見つからないだろう」という前提は崩れやすい

新たに見つかった財産を申告しないまま放置したくなる気持ちは理解できるが、税務署が相続の発生と財産の内容を把握する仕組みは想像以上に整っている。相続税法58条により、市区町村役場が死亡届を受理すると、その情報は税務署に通知される。相続専門の税理士法人チェスターの解説によれば、これが税務署が相続の発生を把握する最初の入口になっている。税務署はこの通知を受け取ると同時に、被相続人の過去の所得税の確定申告や不動産の保有状況といった資料を、全国の国税局・税務署を結ぶKSK(国税総合管理)システムで照会できる。さらに必要があれば、被相続人本人だけでなく配偶者や子など関係者の金融機関の口座についても、別の税理士法人の解説によれば10年程度をめどに過去にさかのぼって入出金の流れを調べることが行われている。タンスや仏壇の奥から見つかった現金や、家族の名前を借りているだけの預金がこうした調査で相続財産と判定されることも珍しくなく、記録を残しておくべき現金・書類の考え方は「遺品整理で捨ててはいけないものとは?相続手続きに必要な書類の保管の考え方」で扱っている。見つけた財産をそのままにしておくという選択肢は、時間が経てば安全になるという前提そのものが崩れやすい。

相続税の時効は何年か

それでも「何年か経てば時効になるのでは」という疑問は残る。同じ解説が根拠として挙げる国税通則法70条1項は、相続税の更正または決定を、法定申告期限から5年を経過した日以後にはすることができないと定めている。つまり原則としては、申告期限の翌日から5年間が税務署による調査・処分の期限になる。ただし同条5項は、偽りその他不正の行為によって税額を免れた場合には、この期間を7年に延長すると定めている。財産をあえて隠したり、名義を分散させて発見を免れようとしたりしたと判断されれば、5年で安心できるはずだったものが7年に延びる。時効を待つという判断には、そもそも「不正の行為」に当たるかどうかという別のリスクが伴っている。

追徴される税金の内訳――過少申告加算税・無申告加算税・延滞税

修正申告や期限後申告をすると、当初の申告で足りなかった税額(本税)に加えて、いくつかの附帯税が発生する。まず延滞税は、法定納期限の翌日から実際に納付する日までの日数に応じてかかるもので、国税庁が公表している割合によれば令和8年中は納期限から2か月以内が年2.8%、2か月を超えた期間は年9.1%になる。この割合は年によって見直されるため、実際に納付する年の割合を確認する必要がある。

これに加えて、修正申告の場合は過少申告加算税、期限後申告の場合は無申告加算税がかかる。財務省が公表している加算税制度の概要によれば、無申告加算税は期限後申告をした税額のうち50万円以下の部分に15%、50万円を超えて300万円以下の部分に20%、300万円を超える部分には30%の税率がかかるのが原則で、こちらも税務署からの事前通知を受ける前に自主的に期限後申告をした場合は5%に軽減される。なお300万円を超える部分の30%という税率は、税理士事務所の解説によれば令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用された新しいルールで、それ以前は20%だった。相続税の申告期限は死亡を知った日の翌日から10か月であるため、令和5年前半以降に発生した相続の大半がこの新しい税率の対象になる。

隠していたと判断されると「重加算税」に切り替わる

財産の存在を知りながら、故意に隠したり、名義を分散させて実態を仮装したりしたと税務署に判断された場合は、過少申告加算税や無申告加算税に代えて重加算税が課される。修正申告の実務を解説する税理士法人の記事によれば、国税通則法68条に基づく重加算税の税率は、過少申告に対応する場合が35%、無申告に対応する場合が40%であり、これまでに説明した加算税よりも重い。前述した名義預金のように、家族の名義を借りて財産の存在を分かりにくくしていた場合は、単なる申告漏れではなく隠蔽・仮装があったとみなされ、重加算税の対象になりやすい。遺品整理で見つかった現金や預金を「誰のものか分からないから」といって放置したり、あえて記録を残さなかったりする行為も、後になって隠蔽の意図を疑われる材料になりかねない。

早く自分から動けば、負担は小さくできる

ここまでの税率を見ると分かる通り、税務署からの事前通知より前に自主的に期限後申告をするかどうかで、無申告加算税の税率は大きく変わる。遺品整理を続けている最中に新たな財産を見つけたのであれば、その時点でまだ税務署からの連絡は来ていないはずであり、いま動けば最も軽い扱いで済む段階にいるということになる。逃げ切れるかどうかを様子見するより、見つかった時点で速やかに動いたほうが、結果的に手元に残る財産は大きくなる。

期限後申告については、さらに手厚い免除の仕組みもある。国税庁の解説によれば、法定申告期限から1か月以内に自分から申告し、その税額を期限内に全額納付していて、かつ申告書を提出する日より前の5年間に無申告加算税や重加算税を課されたことがない場合は、無申告加算税そのものがかからない。相続税の申告期限は死亡を知った日から10か月と長いため、この1か月という区切りが使えるのは主に「そもそも申告が必要だと思っていなかったが、期限を過ぎた直後に気づいた」というケースに限られ、遺品整理を何年も続けたあとで見つかった財産にはあまり出番がない特例だが、期限が切れた直後であれば無申告加算税自体を消せる数少ない手段になる。

修正申告・期限後申告はどこに、どうやって出すのか

修正申告書・期限後申告書は、通常の相続税申告書と同じ書式を使い、被相続人が死亡したときの住所地を管轄する税務署に提出する。相続人が複数いて、それぞれ別の地域に住んでいる場合でも、提出先は各相続人の住所地ではなく、被相続人の住所地を基準に決まる。提出方法は税務署の窓口への持参、郵送、e-Taxによる電子申告のいずれでもよい。修正申告・期限後申告そのものには「見つけてから何日以内に出さなければならない」という法律上の期限はないが、放置している期間が長くなるほど延滞税がかさんでいくため、財産の内容と価額が固まった時点で早めに提出するほうが負担を抑えられる。評価額の見当がつきにくい骨とう品や不動産が含まれる場合は、専門家に相談しながら進めたほうが、税額の見積もりを誤って再び修正が必要になる事態を避けやすい。

当初の相続税申告を相続人全員の連名で1通の申告書として提出していた場合、修正申告も同じ連名の体制でまとめて提出することを検討したい。相続人ごとに別々の申告書を出すこと自体は制度上できるが、同じ被相続人について複数の申告書が別々に届くと、財産の評価額に相続人ごとの食い違いが生まれやすく、税務署から見ても不自然な形になって調査の対象になりやすいと相続税専門の税理士法人は指摘している。新たな財産を見つけた相続人が独断で自分の分だけ修正申告をするのではなく、他の相続人にも共有したうえで、当初の申告時と同じ体制でまとめて出したほうが、無用な調査リスクを避けやすい。なお、令和3年度の税制改正により相続人・受遺者による相続税申告書への押印は不要になっており、現在は署名だけで手続きが進められる。

反対に申告し過ぎていた場合は「更正の請求」

遺品整理を進める中で、当初の申告より税額が減る方向の事実が見つかることもある。葬儀費用の請求書が後から出てきて債務が増えた場合や、当初評価した不動産や動産の価額が実際より高すぎたと分かった場合などである。この場合に使う手続きは、税額を追加で納める修正申告とは逆に、納め過ぎた税金の還付を求める「更正の請求」であり、原則として法定申告期限から5年以内に行う必要があると前述の記事は説明している。遺留分侵害額請求を受けて支払った場合など、特定の事由が生じたときは、その事由を知った日の翌日から4か月以内という別の期限が適用される場合もあり、この点は「遺留分を請求したいときは何をすればいい?内容証明郵便から調停・訴訟までの流れと、支払われないときの対処法」で扱っている。見つかった事実が税額を増やす方向か減らす方向かによって、進むべき手続きの名前も期限もまったく別のものになる。

見つかったものすべてが課税対象になるわけではない

ここまでは申告漏れを補う側の話だが、逆方向の見極めも欠かせない。社会通念上相当な範囲の香典や、一定額までの弔慰金のように、そもそも非課税とされている財産もある。こうした非課税財産まで誤って申告に含めてしまうと、納め過ぎた税金を取り戻すために結局は更正の請求が必要になる。何が課税対象で何がそうでないかを一つずつ確認する手間を惜しまないことが、修正申告と更正の請求のどちらにも共通する備えになる。遺品整理の途中で高価なものが見つかったときの基本的な考え方は「遺品整理で高価なものが見つかったら?勝手に処分しないための民法と相続税の基礎知識」で扱っている。

見つけた瞬間が、次にすべきことを決める分岐点になる

相続税の申告を終えたからといって、遺品整理そのものが完全に終わるわけではない。押し入れや仏壇の奥から新しい財産が出てきたとき、それを申告済みの財産に追加するのか、そもそも申告が必要だったと初めて気づくのかで進む道は分かれるが、どちらの場合も税務署からの連絡が来る前に自分から動くという一点だけは共通している。見つけた財産を記録し、価額の見当をつけ、必要であれば専門家に相談する。その一歩を早く踏み出すことが、加算税を軽くする一番確実な方法になる。

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