遺品整理でスマホや携帯電話が出てきたら?死亡による解約と「承継」の違い、相続放棄との関係

遺品整理をしていると、充電ケーブルにつながれたままのスマートフォンが見つかることがある。電源を入れてみると電波は通ったままで、数日後には故人宛てにキャリアからの利用明細メールが届く。放置すれば料金は発生し続けるが、相続人が勝手に解約してしまって本当に問題はないのか、相続放棄を考えている場合はなおさら迷いが残る。

電話回線の契約は、持ち主が亡くなっても自動的には終わらない

携帯電話の利用契約は、民法896条が定める「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」という原則の対象になる。委任契約のように当事者の死亡で当然に終了する類型とは違い、通信サービスの利用契約は契約者としての地位がそのまま相続人に引き継がれる建前になっている。だからこそドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイルのいずれも、契約者が死亡した事実を家族側から申告しない限り、回線は生きたまま課金が続く仕組みになっている。実際にNTTドコモの案内ページも、死亡を理由にした手続きを「承継」と「解約」の二つに分けて説明しており、どちらも相続人側からの申し出を前提としている。

「解約」と「承継(名義変更)」、何が違うのか

ドコモの説明によれば、承継は契約者としての地位を家族が引き継いで利用を続ける手続きで、これまでの利用期間を引き継げる一方、貯まっていたdポイントは失効する。解約は契約そのものを終わらせる手続きで、同じくポイントは失効し、解約日までの利用料金が請求される。事務手数料はどちらの手続きでもかからない。電話番号をそのまま家族の誰かが使い続けたい、仕事の連絡先として残しておきたいといった事情があれば承継を、誰も使う予定がなければ解約を選ぶという、比較的単純な判断になる。ただし本人死亡の場合は承継を認めず解約のみに限定している事業者もあり、回線を引き継げるかどうかは契約先ごとに違う。

主要キャリアで必要になる書類と手続き窓口の違い

NTTドコモでは、死亡の事実が確認できる書類(葬儀の案内状、死亡診断書、住民票の除票、戸籍謄本など)に加えて、契約者が使っていたUIMカードまたはeSIMの情報、手続きに来店する人自身の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)を用意すれば、家族でなくても、任意後見人や高齢者等終身サポート事業者といった立場の人からの申し出でも手続きが進む。手続き窓口はドコモショップが基本だが、オンライン専用プランの「ahamo」だけは郵送対応になる。

auは、承継と解約のどちらでも戸籍謄本・除籍謄本・住民票の除票のいずれかを求め、それらに死亡の記載がない場合は、会葬礼状や死亡診断書、火葬許可証、故人のフルネームが入った香典返しの礼状など、死亡を裏づける書類をもう一点追加で示す必要がある。

ソフトバンクは来店のみで対応しており、法定相続人のほか、相続財産清算人、死後事務の許可を受けた後見人、死後事務委任を受けた人なども手続きできる。死亡が確認できる書類とUIMカードの持参が基本で、契約者と来店者の姓が違う場合は家族関係を示す書類も追加になる。なお、端末を分割払いにしていた場合、残っている代金の支払いは解約後も続く。

楽天モバイルだけは実店舗を持たない分、手続きが郵送に一本化されている。公式サイトから「逝去解約申込書」をダウンロードし、死亡が確認できる書類、契約者との続柄がわかる書類、申告する本人の身分証のコピーを添えて指定の宛先に送る。申告できるのは二親等以内の親族か、高齢者の生前契約を扱う終身サポート事業者に限られており、受理から解約までにはおよそ2週間かかる。格安SIM(MVNO)の場合も、au系やソフトバンク系など回線を借りている先の事業者ではなく、契約したMVNO自身に死亡の届け出をする必要があり、窓口や必要書類は会社ごとに独立している。

端末の分割払い残債と、未払い料金の扱い

解約や承継の手続きをしても、契約時に端末を分割払い(いわゆる割賦)で購入していた場合、残っている代金の支払い義務は消えない。これは回線の利用契約とは別の、端末本体の売買契約に基づく債務であり、相続財産として相続人に引き継がれる。未払いの利用料金についても同様で、故人名義の銀行口座から自動引き落としにしていた場合、金融機関に死亡の事実が伝わった時点で口座が凍結され、引き落としができなくなって請求書払いに切り替わることが多い。口座が凍結される仕組み自体は別記事「通帳が見つからない?故人の預金口座の探し方」で扱った内容と同じで、携帯料金に限らずあらゆる自動引き落としに共通して起こる。

相続放棄を考えているなら、解約のタイミングに注意したい

民法921条1号は、相続人が相続財産の全部または一部を「処分」したときは単純承認をしたものとみなすと定めている。別記事「法定単純承認」で解説した通り、この「処分」には財産の現状を維持するための保存行為は含まれないとされる一方、何が保存行為で何が処分に当たるかは個別の事情によって判断が分かれる。携帯電話の解約そのもの、つまり契約を終了させる意思表示は、端末を売却したり廃棄したりする行為とは性質が異なる。ただし、未払いの利用料金を故人名義の口座や手元の現金など相続財産から支払った場合は、相続財産を使って債務を弁済したとみなされ、処分に当たる可能性が指摘されている。相続放棄をするかどうかが決まっていない段階で未払い料金を立て替えてしまうと、処分に当たるかどうかの判断が複雑になる。回線契約を終わらせる意思表示そのものと、料金の支払い原資をどこから出すかは、法的には切り分けて考える必要がある論点になる。

「死亡なら違約金が免除される」という話は、もう昔の前提になっている

キャリアのサポートページや相続関連の記事には「契約者が死亡すれば解約金は請求されない」という説明がよく出てくるが、これは今の料金体系ではほとんど意味を持たない前提になっている。2019年10月に施行された改正電気通信事業法により、2年契約など長期契約に紐づく解約金の上限が税込1,100円程度に規制され、総務省の会合での発表を経て、ドコモは2021年10月、au・ソフトバンクも2022年にかけて、長期契約に伴う高額な解約金そのものを撤廃した。かつては2年契約の中途解約で1万円前後を請求される仕組みだったが、今は死亡かどうかにかかわらず、その種の違約金自体がほぼ存在しない契約がほとんどになっている。死亡時の手続きで実際に確認すべきなのは違約金の有無よりも、事務手数料がかからないかどうかと、解約日までの利用料金・端末代金の精算がどう行われるかという点になる。

回線を止めると、端末のロックと中のデータはどうなるか

回線契約を解約しても、端末自体の画面ロックが自動的に外れるわけではない。本体にパスコードがかかっている場合の対処や、キャリアやメーカーに頼める範囲の限界については別記事「ロックのかかったスマホが見つかったら」で扱った通り、業者や通信会社であっても第三者の意思だけでロックを解除することは基本的にできない。回線を解約・承継する前に電話帳や写真、LINEのトーク履歴を確認したいなら、ロック解除の見込みを先に見極める必要がある。解約後に本体だけが残っても、ロックの壁は変わらずそこにある。また、携帯料金と合わせてキャリア決済で引き落とされていたサブスクリプションがある場合、回線自体を解約してもサービス側で個別に解約しない限り請求が別ルートで続くことがあり、この点は別記事「サブスクリプションが見つかったら」で取り上げている。

自宅に固定電話が残っている場合は、携帯とは別の財産が関わる

遺品整理で見つかるのがスマホだけとは限らない。実家に固定電話が残っている場合、契約の種類によっては「電話加入権」という、携帯電話の回線契約とは異なる財産的な権利が関わってくる。電話加入権はかつて数万円の取引価値があったが、現在は国税庁の質疑応答事例でも、家庭用財産とまとめて評価してよいとされるほど資産価値が下がっている。相続税の申告書に何か書く必要があるのか迷ったときは、携帯電話の手続きとは別の論点として切り分けて考える。

先に止めるべきは回線ではなく、情報へのアクセス

多くの人は「早く解約しなければ料金がかさむ」と急ぐが、実際に取り返しがつかないのは課金の停止よりも、ロックされた端末の中身や相続放棄との整合性のほうだ。月々の利用料は数日待っても大きな額にはならないが、確認しないまま解約・初期化してしまった写真や連絡先は、どれだけ急いでも元には戻らない。

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