父の手帳に挟まれたままだった年末ジャンボ宝くじを、遺品整理の途中で見つけることがある。仏壇の引き出しの奥やタンスの奥から、何年も前の宝くじが数枚まとまって出てくることも珍しくない。当たっているかどうかさえ確かめていないことが多いが、宝くじの当せん金には受け取れる期間が決まっており、しかも当せん金そのものは非課税なのに相続税の対象になるという、見落とされやすい仕組みがある。
当せん金を受け取る権利そのものが、相続人に引き継がれる
宝くじの根拠法である当せん金付証票法は、当せん金品の支払い対象を購入した本人だけに限っていない。条文は、当せん金付証票を直接購入した者のほか、その相続人その他の一般承継人に対しても、当せんを確認できる証票と引き換えに支払うことを定めている。つまり、購入者が当せんに気づかないまま亡くなったとしても、受け取る権利自体は消えず、相続人に引き継がれる。
ただし支払いは「証票と引換え」が条件になる。当せん番号を記憶していても、くじ本体を失ってしまえば受け取りようがない。遺品整理で宝くじが見つかったら、その場で処分せず、まずくじ本体を保管することが前提になる。
受け取れるのは「抽せん日の翌日から1年」だけ
当せん金付証票法は、当せん金品の債権について、行使できる時から1年間行使しなければ時効によって消滅すると定めている。受託銀行であるみずほ銀行の案内でも、通常の宝くじは支払開始日(抽せん日の翌日)から1年で時効になるとされており、スクラッチくじは券面に記載された支払期限までとなる。発売の形式によって期限の数え方が違うため、見つかったくじの種類と抽せん日を確認する作業が最初の一歩になる。
受け取り窓口も当せん金額で変わる。1万円以下なら宝くじ売り場やみずほ銀行の本支店、1万円超から10万円以下なら本支店または10万円マークのある売り場、100万円超はみずほ銀行の本支店のみで、本人確認書類が必要になり、処理に1週間程度かかるとされている。相続人が受け取る場合は、購入者本人の死亡を確認できる書類など追加の提出を求められる可能性があるため、高額になりそうな場合は事前にみずほ銀行の本支店へ問い合わせておいたほうが手続きが早い。
注意したいのは、遺品整理が始まる時点で、すでに1年の期限が過ぎているくじが少なくないという点だ。四十九日や相続手続きを終えてから本格的に遺品の整理に取りかかる家庭は多く、さらに古い手帳や仏壇の奥にしまわれたくじは、本人が生前に換金を忘れていたものである場合も多い。抽せん日はくじの発売から数週間後であり、発見した日からではなく抽せん日から数えて1年を過ぎていれば、その時点で当せん金を受け取る権利自体が消滅している。
当せん金そのものは非課税なのに、相続税はかかる
当せん金付証票法はもう一つ重要な規定を置いている。当せん金品については所得税を課さないという、非課税の定めだ。この条文があるために、宝くじで得た金額に確定申告は不要とされている。
しかし、これは所得税の話であって、相続税の話ではない。国税庁のタックスアンサーは、相続税がかかる財産の範囲について、現金・預貯金・有価証券・宝石・土地・家屋のほか、貸付金や特許権・著作権など、金銭に見積もることができる経済的価値のあるものはすべて対象になると説明している。当せん金として現金化された資金はもちろん、まだ換金していない当せんくじそのものも、その当せん金額に相当する経済的価値を持つ財産として、この範囲に含まれる。「所得税がかからない」ことと「相続財産に数えなくていい」ことは、まったく別の話だということになる。
この整理は、タンス預金や名義預金が見つかったときと似ている。現金そのものに税金がかかっていなくても、相続開始時点で本人に帰属していた経済的価値である以上、相続税の計算には含めなければならない。通帳や証券会社の書類が複数出てきたときと同じように、相続税の申告が必要になるかどうかの判断基準に沿って、他の財産と合算して基礎控除を超えるかどうかを確認する必要がある。実際にいくらの税額になるかは、速算表を使った計算方法で他の財産と合わせて算出することになる。
古い宝くじが当たっているかどうかは、どう確認するか
見つかったくじが当せんしているかどうかは、みずほ銀行が公開している当せん番号案内(ジャンボ宝くじ等)のページで調べられる。くじの種類・回号・抽せん日が分かれば照合できる。ジャンボくじのように番号が印字された形式のものは、券面の番号と組・番号を一つずつ照らし合わせる作業になるため、複数枚まとめて出てきた場合は焦らず一枚ずつ確認したほうが見落としを防げる。
ここで確認すべきなのは当せんの有無だけではない。当せんしていたとしても、抽せん日からすでに1年を過ぎていれば権利は時効で消えている。番号を照合した際には、必ず抽せん日もあわせて確認し、受け取れる期限が残っているかどうかを先に判断する。
見つけた人が勝手に換金してしまっていいのか
当せん金を受け取る権利は相続人に引き継がれるとはいえ、遺品整理の最中に見つけた相続人の一人が、他の相続人に知らせずそのまま換金してよいわけではない。当せん金も遺産分割の対象になる財産であり、遺品を売ってお金に換える場面と同じように、相続人全員の同意なく独断で処分すれば、あとで使い込みを疑われたり、他の相続人との関係がこじれたりする原因になる。
また、遺産分割が終わっていない段階で相続財産を処分する行為は、高価な遺品を独断で処分してはいけないという原則にも関わってくる。相続放棄を検討している相続人がいる家庭では、換金という行為自体が単純承認(相続を受け入れたとみなされる行為)に数えられるおそれもある。見つけた当せんくじが高額であればあるほど、受け取り期限を気にするあまり一人で窓口に走る前に、他の相続人へ連絡を入れておくことが欠かせない。
家族ぐるみで共同購入していた宝くじだった場合
見つかったくじが、故人を含む家族や同僚との共同購入だったとわかるケースもある。この場合はさらに整理が複雑になる。共同購入の宝くじは、代表者が窓口で当せん金をまとめて受け取り、それを他の出資者に分配する形が一般的だが、税理士法人や金融機関のコラムは、代表者が受け取った当せん金を他の人に分配すると、受け取った側に贈与税がかかると説明している。当選者本人が受け取る分には所得税がかからないという非課税の範囲は、本人以外に渡った時点で及ばなくなるためだ。
故人が共同購入の代表者だった場合、当せん金は一旦すべて相続財産として扱われ、本来の出資者への分配は、相続人から見ればやはり贈与として扱われる可能性がある。逆に故人が出資者の一人にすぎなかった場合は、受け取る権利があるのはあくまで代表者であり、相続人が単独で窓口に持ち込んでも支払いを受けられるとは限らない。誰が代表者で、誰がいくら出資していたのかという共同購入の実態を、他の出資者に確認することが、換金より先にやるべき作業になる。
タンスや手帳の奥から出てきた一枚の宝くじは、金額以上に手間のかかる確認作業を家族に残すことがある。抽せん日と期限を確かめ、他の相続人と共有してから窓口に向かう、その順番を守ることが、小さなトラブルを避ける一番の近道になる。

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