遺品整理で古い紙幣(旧紙幣)が出てきたら?今でも使えるお札と、使えなくなったお金の見分け方

実家の桐だんすを整理していたら、奥の引き出しから聖徳太子の顔が印刷された一万円札や、昔の海外旅行で使い残したドル紙幣の束が出てきた——遺品整理の現場では、こうした「見慣れないお金」に出会うことが少なくない。古いというだけで価値がないと決めつけて処分する人もいれば、逆に全部をとりあえず保管し続ける人もいるが、実は旧紙幣には今も額面どおり使えるものと、とっくに効力を失ったものがはっきり分かれている。

「聖徳太子」や「伊藤博文」の旧紙幣はまだ使えるのか

結論から言えば、デザインが古いこと自体は「使えない」理由にはならない。日本銀行は、これまでに発行した日本銀行券は56種類にのぼるが、そのうち25種類は現在も有効だと説明している。現在発行されている一万円券・五千円券・二千円券・千円券はもちろん、すでに発行を停止した聖徳太子の一万円券、伊藤博文の千円券、岩倉具視の五百円券、板垣退助の百円券なども、日本銀行が「引き続き有効な銀行券」として明示している紙幣に含まれる。つまり額面どおりの支払い能力(強制通用力)を失っておらず、理屈の上では今日買い物に使っても構わない。2024年7月には渋沢栄一・津田梅子・北里柴三郎を描いた新デザインの一万円券・五千円券・千円券が発行されたが、これは従来の紙幣を失効させるものではなく、それ以前に発行された紙幣も変わらず使える。遺品の中から見慣れないデザインの紙幣が出てきたとしても、それだけで価値を失ったと判断するのは早計だ。

一方で「使えなくなった旧紙幣」も実在する

ただし、発行された56種類のうち31種類は、すでに通用力を失っている。日本銀行はこれを3回の特別な措置によるものと説明している。1つ目は1927年(昭和2年)、関東大震災後に発行された震災手形の整理にともなう兌換券の整理。2つ目は1946年(昭和21年)の、いわゆる「新円切替」で、額面5円以上の旧日本銀行券は強制通用力を失っている。3つ目は1953年(昭和28年)で、法律第60号「小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律」第3条が「小額通貨は、昭和二十八年十二月三十一日限り、その通用を禁止する」と定め、1円未満の小額の貨幣・紙幣が姿を消した。つまり、戦前・戦中に発行された紙幣や、1円未満の紙幣・硬貨が出てきた場合は、今は使えないと考えたほうがよい。

手元の一枚が「有効」か「失効」かを確かめる方法

普段目にする一万円・五千円・二千円・千円の現行券は当然使える。聖徳太子や伊藤博文のような旧デザインの券も、1946年の新円切替より後に発行されたものであればまず失効していないと考えてよい。問題は、それより古い紙幣や、額面が1円に満たない紙幣・硬貨が混ざっている場合で、こちらは原則として失効している。判断に迷うときや、紙幣が汚損・破損していて使いにくいときは、日本銀行の本店・支店で交換を受け付けている。対象になるのは「損傷したお金」と、聖徳太子の一万円券のように「すでに発行を停止していて流通に不便なお金」で、日本銀行のウェブサイトによれば事前予約制、受付時間は平日9時から15時までとされている。普通の金融機関の窓口でも旧デザインの券をそのまま入金できることが多いが、対応は窓口ごとに異なるため、まとまった枚数がある場合は事前に確認しておくと手間が省ける。

焼けた紙幣・濡れた紙幣は面積で交換額が決まる

古い家の遺品整理では、紙幣そのものが火事や水害、あるいは長年の湿気で一部が欠けた状態で見つかることもある。こうした損傷した紙幣は、無効というわけではなく、券面の残存面積に応じて交換額が決まる仕組みが用意されている。日本銀行の基準では、元の券面の3分の2以上が残っていれば額面どおりの全額、5分の2以上3分の2未満であれば半額で引き換えられ、5分の2に満たない場合は引き換えの対象外になる。この引き換えも日本銀行の本支店で「引換依頼書」に損傷現金を添えて申し込む方式で、手数料はかからない。燃えて炭化した紙幣や、シロアリに食われてぼろぼろになった紙幣であっても、原形をとどめている部分の面積次第で額面の一部が戻ってくる以上、灰や断片まで含めて自己判断で捨ててしまうのは早い。

失効した紙幣に、まったく価値がないわけではない

強制通用力を失ったということは、買い物の支払いに使えなくなったという意味であって、紙幣そのものの価値がゼロになったということではない。発行枚数が少ない券種や保存状態の良いものには、収集市場での評価が別につく場合がある。当サイトは査定や買い取りを扱わないため金額の目安には立ち入らないが、この種の価値は現金としてではなく、むしろ骨とう品・コレクション品に近い性格の遺品として扱われる。高価なものが遺品の中から見つかったときにまず確認すべきことは、額面の大小にかかわらず共通するので、独断で処分したり誰かに譲ったりする前の判断材料になる。

海外の紙幣・硬貨が出てきた場合は事情が異なる

旅行の土産で余った外国の紙幣や硬貨は、そもそも日本国内では法貨として扱われない。コンビニでもスーパーでも直接の支払いには使えず、円に換えるには金融機関や両替商を通す必要がある。両替できる通貨の種類やレートは窓口によって差が大きく、流通量の少ない通貨は取り扱っていない窓口も珍しくない。さらにやっかいなのは、外国の紙幣にも日本と同じように「旧紙幣の失効」という制度が存在することで、発行国の中央銀行が独自に交換期限を区切っている場合がある。日本の金融機関の窓口ではその国の制度までは判断できないことが多いため、まとまった額が出てきたときは、発行国の中央銀行や大使館のウェブサイトで通用状況を確認するのが早い。

相続税の申告では、使えるかどうかより「評価額」が問題になる

有効な旧紙幣が多額に見つかった場合、それは現金として他の遺産と合算して申告する。タンスの奥からまとまった現金が出てきたときに論点になりやすいのは、誰の名義の財産として扱うかという点で、この「名義預金」的な判断基準はタンス預金が見つかった場合の記事で扱った内容と重なる。外貨については、相続開始日(死亡日)時点の相場で円に換算して評価する。国税庁の取り扱いでは、取引金融機関が公表する課税時期の対顧客直物電信買相場(TTB)、またはこれに準ずる相場を使うと定められており、根拠は財産評価基本通達4-3に置かれている。失効した紙幣であっても、収集価値が額面を大きく超えると見込まれる場合は、現金ではなく骨とう品に近い扱いで申告対象になりうる点は前述のとおりで、相続税額そのものの計算方法は速算表を使った計算方法を解説した記事を参照してほしい。

結論を急がず、まず相続人どうしで額と中身を共有する

有効な紙幣なら使ってしまってよいし、失効した紙幣なら金銭としての役目は終わっている。ただし見つけた本人の判断だけで誰かに譲ったり、収集家に売ったりするのは筋が違う。遺品を売却してお金に換える行為には相続人全員の同意が必要になる理由があり、それは紙幣であっても変わらない。まずは有効か失効かを見分け、まとまった額であれば相続人全員で共有してから、使うか、交換するか、保管するかを決めればいい。

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